『モノポリー』のルーツ

ウィキペディアの日本語版にも書かれていますが、モノポリーには原型となったゲームが存在します。
これらのゲームはパーカーブラザーズがモノポリーを製品化する際にその版権を購入していることからもその事実が裏づけられます。
今回はそのルーツをたどっていきます。


(1)エリザベス・マギーの「ランドロード・ゲーム」
1904年にアメリカのエリザベス・マギーが「ランドロード・ゲーム(Landlord Game,Landlordは地主、家主)」の特許を認められたところから話は始まります。
ランドロード・ゲームはジョージズムという経済の考えを理解するための教育的ゲームとして考案されました。
このゲームの本来の目的はゲームを通じて不公平さなどを自然に感じさせることで現在の経済制度に疑問を持たせるということにありました。



・この位置から見て右上がGOに相当する場所です。
ボードのデザインは現在のものとほぼ同じです。しかし、カラーグループや土地の名前は存在せず、交渉もないシンプルなルールでした。


20年後の1924年、彼女は新しいバージョンのランドロード・ゲームの特許を取得します。

・通りの名前のいくつかが彼女の出身地であるイリノイ州のシカゴの地名にちなんで名づけられているのが特徴です。
また、独占でレンタル料が増えるなどのルールの追加などもあります。


このバージョンは1932年にAdgame社から製品化されましたが、これとは別に、アレンジした自家製のボードが大学生やジョージスト、それらの知人などによって広まりました。
この頃から教育目的のゲームから遊んで楽しむためのゲームへ変化していったようです。


(2)トゥーン兄弟の「モノポリー
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※画像はhttps://themonopolist.net/から

1931年、ランドロード・ゲームを学んだルイス・トゥーンとフェルディナンド・トゥーンの兄弟はランドロード・ゲームのルールをアレンジしたゲーム「モノポリー」を手作りで製作しています。この「モノポリー」では現在のモノポリーでも採用されているルールが初めて導入されています。
・チャンスと共同基金の2種類のカード
・グループ独占によるレンタル料の倍増
・鉄道の権利書を複数枚所有することによるレンタル料の増加
・銀行に50ドル支払うことで刑務所から釈放される
・家5軒に相当するホテル(考案時はアパート)が建設できる


(3)ダン・レイマンの「ファイナンス」とルース・ホスキンスのアトランティックシティ版「ファイナンス」、チャールズ・ダロウの「モノポリー
トゥーン兄弟からモノポリーを教わったダン・レイマンは1932年にランドロード・ゲームを改良し、彼の出身地であるインディアナ州インディアナポリスの地名をつけたボードゲームファイナンス」を製作しました。
このゲームの権利は後にナップ・エレクトロニクス社に200ドルで売却されています。


・ゾロ目で進める回数に制限がなかったり、破産すると銀行に全資産を返すなどのルールが用いられていました。
また、権利書の交換など現在のモノポリーにもあるルールが含まれています。

また、ダン・レイマンにランドロード・ゲームを教わったルース・ホスキンスはこのファイナンスを転居先のニュージャージー州のアトランティックシティの地名に変えたものを製作しました。

これをチャールズ・トッド(チャールズ・ダロウの妻であるエスターの高校時代のクラスメート)から教わったチャールズ・ダロウが改良を加え現在の「モノポリー」が製作されました。
この際、チャールズ・トッドが教えたマービンガーデンの綴りのミスをそのままダロウが引き継いでしまいました。


(4)パーカーブラザーズによる他の版権の買収
1935年2月のモノポリー発売のあと、パーカーブラザーズはチャールズ・ダロウがモノポリーの唯一の考案者でないことを知り、同年に独自の版権を主張するために他のゲームの版権を買収しました。
エリザベス・マギーは自分の考案したランドロード・ゲームの名前とルールを変更しないことと自ら考案した他の2つのゲームの製品化を条件にランドロード・ゲームの版権を500ドルでパーカーブラザーズに売却しました。
同様にルイス・トゥーンからは彼らが製作した「モノポリー」のボードの残り全てを50ドルで、ナップ・エレクトロニクス社からファイナンスの版権を1万ドルで買収しています。

また、1936年にはコープランド社の「インフレーション」がモノポリー著作権を侵害しているとして訴訟を起こしましたが、この裁判ではコープランド社がチャールズ・ダロウがモノポリーの唯一の考案者でないことを示す証人を準備していたため、インフレーションの版権を1万ドルで買収することで和解しています。

なお、パーカーブラザーズの買収した「ファイナンス」はモノポリーが発売された1935年に「フォーチュン」と名前を変えて発売されていますが、特徴的なイラストや金属製の駒は使っていないものの実際はモノポリーのクローンゲームといっていいものであり、これはチャールズ・ダロウがモノポリーの唯一の考案者でないと認定された場合にすぐに売り出すことのできるパーカーブラザーズが用意した保険のようなものでした。



参考資料
ウィキペディア(英語版)
History of the board game Monopoly
http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_the_board_game_Monopoly
Elizabeth Magie
http://en.wikipedia.org/wiki/Elizabeth_Magie
The Landlord's Game
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Landlord%27s_Game
Finance (game)
http://en.wikipedia.org/wiki/Finance_(game)


・World of Monopoly(Financeの項目)
http://www.worldofmonopoly.com/history/Finance.php

・Monopoly LEXICON(USA Self-made gameの項目)
http://www.muurkrant.nl/monopoly/usa_selfmade_games.htm

・THE MONOPOLIST(カテゴリー:モノポリーの歴史)
https://themonopolist.net/category/monopoly-history/