モノポリー初心者と交渉(前編)

ウィキペディアの記事にモノポリーの初心者の行動などについて大変参考になる項目がありましたので、一部を引用しながら解説します。
交渉 - Wikipedia

● >交渉の技術が無い場合の状況
>(1)多くの人は、交渉は利益の奪い合いであると考える。
>(2)人間には、いったん攻撃されると、仕返しをする習性がある。
>(3)人間には、いったん戦いになると、全力で勝とうとする習性がある。
>(4)人間には、相手の意図を正しく把握する能力が無い。
社会心理学の帰属理論が明らかにしたことは、人間は相手の行動の意図を正しく把握できないことである。
>自分自身については、その止むを得ない事情を知っており、痛みを感じ、自分の苦労を共感的に理解しているが、相手に対してはそうではない。
>根拠も無いのに、相手が最低最悪の意図を持っていると即断してしまうのである。長い自然状態の下では、当然の推定であった。

・解説
(1)そもそも交渉は互いに利益を得るものであるという基本的な考えを持たない人もいるようです。また、保有効果(※1)や現状維持バイアス(※2)が働くことによって交渉することをためらう人もいます。

※1…保有効果
ある物を実際に持っている場合には、それを持っていない場合よりそのものを高く評価する。ものを所有していると手放すことによる損失を恐れてしまう傾向。

※2…現状維持バイアス
現状からの移動を回避する傾向。現状が悪い状態ではない限り、損失回避的な傾向が働けば現状維持に対する思考が強くなる。

(2)望む、望まざるに関わらず、相手からレンタル料を取るという行為はモノポリーでは普通の光景ですが、初心者はレンタル料を払わされるということに対してストレスがかかります。(これはレンタル料の額が高くなるにつれて高まる傾向にあるようです。)
その結果、客観的には双方に不利益になるにもかかわらず、交渉/救済の拒否や特定のプレーヤーを対象とした家の建設などによる仕返しが行われることとなります。

(3)全力で勝とうとするからこそ、負けたときのストレスも大きくなります。また、家を建てたのに全く止まらなかったり、止まる確率の低い場所に連続して止まってしまったなどという要素もストレスの度合いに影響します。

(4)レンタル料を取るというゲーム内の行為であるにも関わらず、それを自分に対する嫌がらせと一方的に判断する人がいます。モノポリーを否定的な意味で言及するときに用いられる、「モノポリーは性格が表れるゲーム」というのはいわゆるネガティブキャンペーンのようなものです。

● >交渉の技術
>(1)まず、相互に本心を正確に主張しあうこと
>自分の主張を相手に正しく伝えることが交渉の出発点である。自分にとっては自明の内容でも、言葉にして相手に伝えなければ、相手には分からない。ただし、最低売却価格など、通常は相手に言わない事もある。

>(2)次に、相手の意図を正確に把握すること
>次に、相手の主張を正しく理解して把握することが必要である。有名なオレンジの例では、一つのオレンジを姉妹二人で奪い合うが、姉は実はオレンジの皮だけ欲しかったことが判明して、問題が解決した。

>(3)戦うのではなく、共同で問題解決を目指すこと
>相互に相手の主張や意図を把握した後に、共同で問題解決を目指す。双方が心から満足できる解決策を模索する。

>(4)妥結のためのアイデアを可能な限り多く出すこと
>妥協案をなるべく多く考案する。「○○を譲ってくれれば、△△は譲る」のような案も多く出す。この過程で、相手の主張をより正確に把握することが可能になる。

>(5)主張内容の差を考えること
>野球選手の年俸交渉がまとまらない場合に、来期の出来高払い制を取り入れると妥結することがある。来期の活躍の見通しに差がある場合には、それを反映させた案であれば、妥結が可能になりやすい。

>(6)安易に譲歩しないこと
>安易に譲歩すれば、交渉は容易に妥結するが、自分の不満が蓄積する。
(以下省略)

・解説
(1)・(2) 実戦でもよく起こりますが、条件だけ出て全くまとまらない交渉というものがあります。

(3)一方的な条件提示で押し切ろうとすると交渉そのものが決裂する場合があります。また、相手の感情を悪化させることにもつながります。

(4)複数の案の提示は逆に相手を混乱させてしまう場合もありますが、一つの案だけでまとまりそうにない場合は他の案も提示してみるとよいでしょう。

(5)自分だけが有利になることを考えて案を出してもまとまることはまずありません。提示した条件を断られた場合はなぜ断られたのかを考えるのも必要です。

(6)「よく分からないがこの条件で受けよう」と思って成立した交渉は、交渉後に自分にとって不都合なことが起こったとき相当なストレスを受けることになります。数手先の状況がよく把握できないときや混乱している状態にある場合は交渉の条件を変えてみたり、ひとまず断ったりするのがよいでしょう。